2009.07.08

 「願いと夢の違いってなにかなあ、」と友だちが言う。……願いは誰かへ差し出すもの、夢は自分で秘めるもの。そう考えてみれば、わたしが願いを思いつかないのも道理で、今、どうしても叶えたいと思っているひとつのことも、願いではなく明確に、夢なのだと思う。
 
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 会いたいと思えば誰にでも会えるのだ、と、根拠もなく信じていたころがあった。高校生のころ。本気で願いさえすれば、自分と相手が生きている限り、どんなに遠い人でもいつかは会って話せるチャンスがくると、その時は当然のことのように思っていた。若くて、傲慢だったのだと思う。
 それでも最近、あれはあながち嘘でもなかったな、と思うようになった。たぶん、本当にそうなのだ。本気で会いたいと思う人がいて、それを願い続けていれば、きっと会える。アイドルに憧れる高校生みたいなことだけれど、本当に、そうだと思う。
 ……これは、夢ではなく、願いの話。



2009.07.07

 会社を出て、川べりの道まで歩いた。昨日見た月が忘れられなかったのだ。満月にほんの少し欠けた、きれいな月だった。この時間、月が出ている空は、そこまで行かないとビルにさえぎられて見えない。
 七月七日は雨の特異日なのだと、昔、教えてくれた人がいた。織姫と彦星が雲の向こうで、誰にも邪魔されずに二人きりで会えるよう、地上は雨なのだ、と。それ以来、毎年雨を数えているが、今年は晴れ。けれど、出ているはずの月は、雲に隠れて見えなかった。夏のような風が吹く。
 天の川って、ざぶざぶ渡るには広すぎるのかな、と、思いながら会社の前の道路まで戻り、ガードレールに腰掛けた。友だちにメールを打っていると、出てきた上司が、飲みに行こう、という。すぐ近くの居酒屋で、ビールを一杯。

 帰り道、ようやく顔を出した月を見ながら歩く。星への願いは、思いつかない。



2009.07.06

 夏の着物を買ってしまった。盛夏……たった二ヶ月しか着られないし、着物で出かける予定もないのに、なんて愚かな。しかし、薄緑で市松模様が描かれた絽の着物と、紫の羅の帯、きれいで、うっとりする。周りが寝静まった夜中、こっそりと鏡の前で羽織ってみたり。どうして夏の薄物に、わたしはこれほど惹かれるのだろう。
 それにしたって、本当に気に入った服というのはそう簡単には見つからないし、着る服だって限られているのに、なぜ、こんなに着るものを買ってしまうのだろう、と後ろめたく思ってばかりだ。世に物欲の種はつきまじ。しかしもう買うのはやめよう、せめて今持っている服を半分くらいに整理してから……、と思っていたら電話が鳴った。
 「先日買っていただいたデニムと合いそうなトップスが入荷しましたのでご連絡を……」
 むむむむむ。



2009.07.04

 定期的に身体を診てもらっている先生が居て、曰く、「最近調子がいいですね」とのこと。「調子がいい」というのがつまりどういうことなのかというと、自分で自分の身体をコントロールできている、ということだ。具体的な話で言えば、食べるものに気をつけて油分と砂糖は控える、ストレッチやマッサージで筋肉と関節をやわらかくしておく、身体を冷やさないようにして、血液の循環をよくしておく、ということだ。そうはいっても、ドーナツが大好きで、慢性的な運動不足、エコとは程遠いオフィスの温度、ときたらなかなか実現が難しいのだけれど、それでも、まあ、気をつければ気をつけただけのことはある、のかもしれない。
 
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 友だちと銀座へ。アップルストアで内田ユキオさんのトークショウ、風月堂でお茶、松屋で買いもの。とにかくとても楽しくて、ずっと、笑いっぱなしだった。
 紫陽花がやけにきれいに見えたり、夜の銀座を歩くのが嬉しかったり、好きな写真家の話で盛り上がったり、日常が時折きらきら輝くのは、やはり、ものがたりの力なのだと思う。

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 帰り道、別れたばかりの友人からメール。「今さっき、携帯占いを見たら、今日のラッキーパーソンは天秤座の人だって。桃って天秤座じゃない?占いもたまには当たるのね」って。嬉しくて、俯いてこっそり笑いながら夜道を歩く。……いい一日だった。



2009.07.03

 会社で仕事をしていると、指先から、ちゃぷちゃぷと音でもしそうに重たくなって、もう、眠くて仕方がない。
 やっとのことで目を開いて、キイボードをぽつぽつと打っていくけれど、目の前に霞がかかって、自分の手だけが切り離されて遠くにあるような気がしてくる。首筋の後ろの方から、ずっしりだるい。
 
 ひとつ、新しい仕事が決まりかけて、ひとつ、大切な仕事を失いかけている。企業のなかで働いている以上、自分だけの思う通りにできないのは当然のことだけれど、それが時々、少し切ない。それでも自分のこの場所で、自分ができるだけのことをやってみる。結局はそうして一日一日を積み重ね、そこで時々かすかに光る何かを、拾い上げていくしかないのだ。