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2010.02.16
頭から指先まで、泥水がつまったような気分で仕事。もちろんそんな気持ちを表に出すわけにはいかないので、平常心、平常心、と心の中で何度もつぶやく。幸い、食欲なんてちっともないので、一日中、殆ど会社の自分の部屋に閉じこもったままキイボードを叩く。胃が痛くて仕方がない。なにも考えられないし、何か書こうとすると吐き気がする。原因は分かっているが劇的な解決方法はなく、たぶん、生傷がふさがるのをじっと待つことしかできない。その一方で、こんなことでこんなに傷つくなんて甘いし馬鹿ばかしい、と、思う。
2010.02.15
もう、どんな言葉も聞きたくないしどんな言葉も書けない、と思う。
2010.02.08
愚痴を書く。
1.どんな立場のどんな人でも、勤怠が悪い人のことをわたしは信用しないしできない
2.どんなに仕事ができても、自分の能力を過信して奢るな
3.人の意見に一切耳を貸さないのであれば、洞穴の中で一人で仕事しやがれ
ああ、嫌だ嫌だ、もう嫌だ、
わたしが洞窟にこもって一人で仕事したい。
2010.02.07
風が強く吹く日曜日。
2010.02.06
タブッキの『インド夜想曲』と、ナイポールの『闇の領域』をかわるがわる読んでいた。そのせいで、自分がどこにいるのか時折曖昧になり、見える景色が二重写しになっているようでくらくらする。
もしかしたらわたしは、旅というそのものよりも、「移動」が好きなのかもしれない、とふと思う。特に、夜の飛行機に乗っているようなときには。
めずらしく窓際の席を予約したので、羽田に着陸するとき、ずっと外を見ていた。わたしは、どんな場所より東京を一番好きだと思う。それはなぜかというと、自分が一番必死で生活してきた場所が東京なのだし、好きな人たちがいる場所が東京だからだ。きらきらとひかる街の明かりのひとつひとつ、それが、わたしにとっては、いちいち名前を持っている光なのだ。
2010.02.05
あこがれは遠い
少し前のこと、ある研究機関でインタビュー調査に協力した。会社は関係なく、個人としての「働く女性」を対象にしたもので、ライフワークバランスとかジェンダーとか。
何がポリティカリー・コレクトで何がそうでないことなのか、わたしにはいつも分からないのでこういうところで書くのは難しいのだけれど、これだけはシンプルに、いろんな「普通」を容認する世の中が望ましいのだといつも思っている。ただ、「女性は結婚して家庭に入り子育てをするべき」などという人種とか、派遣社員だというだけで、それがキャリアを積んだ女性であっても「女の子」と呼ぶ、そういう文化は早く絶滅すればいいのに、と心から思うけれど。しかしわたしも、「働く女性」であることを少しでも振りかざすことがないようよくよく注意しなければなるまい。
インタビューの最後に、「尊敬する、もしくは目標とする女性はいますか」と聞かれ、だいぶ困り、(白洲正子……ちょっと違う、カツマカズヨ……絶対違う、ヒラリー・クリントン……違うし、森のイスキアの佐藤初女さん……通じないだろうなあ、ウチの母親……っていうのは恥ずかしいし、緒方貞子さん……近いかも、ああ、向井千秋さんって言おうかな、それにしても何で女性限定なんだろうか?いっそのことカトリーヌ・ドヌーブって言おうかな……、などと思った挙句、)幸田文さん、と言ったら大層不思議な顔をされた。
2010.02.04
今日から春
もう春、と少し前から思っていて、本当はもう、ウールやツイードは着たくないのだがまだ寒いので仕方ない。その代わりに、リバティの布を買った。優しい花柄は春にぴったりで、ふわふわしたブラウスなど作ろうと、毎日うっとりと眺めている。リバティ・プリントには今まであまり惹かれたことがないのだが、なんでだろう、最近花柄というものにあまり抵抗がなくなった。
イギリスにいた頃、たまにリージェント・ストリートにあるリバティに行くのが好きだった。白と黒のチューダー朝の建物でそれ自体も素敵だったし、中にはいつもクラシックで品のいいものが沢山あったから。今はどうなっているのだろう、もしいつかロンドンに行くことができたら、きっと行ってみようと思う。
もうすぐ、姉に子どもが生まれる。女の子だと言う。産着……は無理にしろ、やわらかいコットンで何か仕立てようと思っている。
2010.02.03
お元気ですか。
朝。混んだ電車に乗ってドアの前に立ち、ふと前を見るとガラスの向こうに知った顔が映っていた。はっとして思わず振り向くと後ろの人が迷惑そうな顔をしたから、わたしは小さく頭を下げてからまた前を向いた。あの人だ、と思った顔は輪郭とおでこのあたりが似ていたが全くの別人で、まあ、確かに、こんな電車に乗るとも思えない。公共交通機関が嫌いで、いつも小さな原付バイクに、中に大きな猫を入れたヴィトンのキャリーを乗せて走っていたのだから。それでもわたしはしばらく動悸が治まらなくて、ドアの前、ぼんやりと立っていた。
……時折こんなふうにふと、思い出す誰かがいる。
2010.02.02
春のにおい
一面の雪景色を夢見て目を覚ますと、もうすっかり止んでいた。むこうから朝陽がきらきらと光っている。清んだ朝。
長靴を履いて川沿いの道を歩くと、はちきれそうな空気が満ちているのに気づいた。
まだ白い屋根を掠めて雪の向こうから、春が香っている。
2010.02.01
雪、
駅に直結しているビルから改札をくぐりホームに立つと、雪がしんしんと降っていた。電車が雪化粧している。どうにも体調が悪く、ぽっかりと空いている山手線のシートに座り、ぼんやりと外を見ていた。夜の雪。なんでだろう、雪は永遠というものを連れてくる。雪降る中走る電車は、永久機関になる資格さえありそうだ、と思う。
ふと思い立ち、手袋を外し凍える指先で友人のメールを送った。雪が降ってきました、と、何故かそれだけが伝えたくて。
自宅最寄の駅に着くと、視界が白く揺れる。強い風に、雪が舞っていた。わたしは少し嬉しくなって、しばらくそこで雪を見たあとそろりそろりと足を踏み出す。10センチのヒールの靴が、雪道を歩くのに向いているとは思えない。
静かな夜だった。
夜、寝る前、カーテンの隙間から外を見ると、見渡す限りの屋根が白く、ベランダにもふんわりと雪が積もっていた。
……太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪降りつむ。
わたしも雪の屋根の下、みんなと一緒に、深く眠った。